伝染病
破傷風 Tetanus
破傷風は、破傷風菌が産生する毒素によって、口唇や手足のしびれ、口が開けにくいといった神経症状を引き起こし、診断・治療が遅れると全身けいれんを引き起こし死に至る感染症です。破傷風菌は全世界の土壌中に存在し、主に傷口から感染します。特にアフリカ、東南アジア、中南米などの途上国では、ワクチンの不足や不適切な傷の手当などが原因で患者が多く発生しています。
けがに注意しましょう
旅行者では、裸足で川遊びなどをしたり、誤って物を踏んだときに足に傷を負ったり、運動中や交通事故、動物にかまれてけがを負ったときなどに、感染が多くみられます。けがをしないよう心がけましょう。けがをした場合、まず水で傷口を洗い流し消毒します。破傷風菌は空気に触れない状態を好む菌で、傷口がふさがると増殖するので、不用意に傷を閉じたりせずに早めに医師に相談して下さい。
黄熱 Yellow Fever
黄熱は蚊によって媒介されるウイルス性の感染症です。有効な予防接種があるため旅行者が感染することは少なくなりましたが、各種の動物と蚊の間でサイクルが形成されているので、黄熱の撲滅は困難であるといわれています。海外ではアフリカ、中南米地域の国々を中心に依然として患者発生がみられますので、流行地域への旅行者は予防接種を受けるなどの注意が必要です。WHO によると、2000年から2004年までの5年間で、アフリカではギニアで936名、コートジボワールで717名、スーダンで222名、リベリアで199名、セネガルで138名、中南米ではブラジルで210名、コロンビアで175名、ペルーで156名の患者発生報告がありました。
蚊に刺されないようにしましょう
黄熱は蚊によって媒介される感染症です。流行地では、防虫スプレーや蚊取り線香を用意し、厚手の服の着用(長袖、長ズボン)をおすすめします。
コレラ Cholera
コレラは世界に広く分布する細菌性の感染症です。WHOによれば、2006年には52ヶ国から23万6896人のコレラ患者の報告がありました。実際の患者数はこの報告数よりもはるかに多いと考えられています。現在のコレラは、主にエルトール型コレラと呼ばれるもので、1961年頃からアジア地域で発生し、感染力が強いためアジア型コレラに替わって瞬く間に世界中に広がりました。幸いなことにアジア型コレラに比べ病原性が弱く、死亡率も2%程度といわれています。
不衛生な食品・生の食品は避けましょう
コレラが流行している国では、生水・氷・生の魚介類(刺身・エビなど)は避けましょう。ジュースの中の氷や氷の上に飾られていたカットフルーツで感染した例やプールの水を誤って飲んで感染した例も報告されています。現在日本で市販されている予防接種の効果は比較的低く50%程度であるといわれています。不衛生な食品・生の食品などの摂取を避けることがまず重要なことですが、無理な旅行日程などによって体調を崩すことがないよう心掛けることも大切です。
ペスト Plague
ペストは、ペスト菌を持ったノミに吸血されることによって引き起こされる感染症です。歴史的に古くから、世界中で大流行を繰り返し、高い死亡率と、皮膚が黒くなることから、「黒死病」と呼ばれて恐れられていました。
腺ペストはノミの吸血を避けることで予防が可能ですので、流行する地域ではネズミの生息する場所へは立ち入らないようにしましょう。ノミを防ぐ目的で虫除けスプレーも多少は効果が期待できます。肺ペストは流行することは少ないのですが、患者の咳や痰の飛沫によって、ヒト-ヒト感染が起こります。流行しているときは激しい咳をしている人には近寄らないことが唯一の予防法です。
B型肝炎 Hepatitis B
B型肝炎はウイルスによる肝炎の一種です。患者の一部に急性の致死的な肝炎が生じたり、持続感染にともなう肝障害の結果、肝硬変や肝臓がんが起こったりすることが問題になります。かつて日本では輸血による感染、母体から新生児への感染(母子感染)が大きな問題となりました。現在は輸血血液のスクリーニング、母子感染予防事業によって、輸血を介する感染、母子感染は大きく減少しました。しかしながら、B型肝炎は世界的に感染率の高い地域が存在すること、体液を介する感染、性的接触による感染を起こすことなどから、依然として重要な感染症です。
感染予防にはワクチンが有効です
感染予防にはワクチンが有効です。B型肝炎に感染しているヒトの血液や体液を扱う機会の多い医療関係者はワクチン接種が必須です。B型肝炎の感染者が多い地域(目安としてHBs抗原陽性率が2%以上)への旅行者も滞在期間や目的に応じてワクチン接種が必要となります。母子感染の予防については決められた方法があり、医療機関がそれに基づいて予防処置を行います。感染率の高い地域では、体液で汚染される可能性のある医療用器具、カミソリ、歯ブラシなどが滅菌済みか使い捨てのものであることを必ず確認してください。そうでなければ使用しないように伝えてください。また、性交渉の際のコンドーム使用が感染予防に重要です。
日本脳炎 Japanese Encephalitis
日本脳炎はアジアで広く流行している病気で、毎年、3万5000〜5万人の患者が発生しており、1万〜1万5000人が死亡していると推定されています。日本でも、かつては患者が多くみられましたが、予防接種が開始されて、患者数は著しく減少しました。 日本脳炎ウイルスは、蚊によってブタから人に伝播します。日本脳炎は、高温多湿な気候で、ブタなどを飼育し、蚊の発生しやすい水田のある地域に多く発生しています。温帯地域では夏期に、その他亜熱帯・熱帯地域では雨期に発生が多くなります。
蚊に刺されないように注意しましょう
虫よけスプレーや蚊取り線香などを利用し、肌を露出しない服装を心がけましょう。特に蚊の発生が多い水田地帯やブタなど動物を飼育している地域では、防虫対策を忘れないで下さい。中国や韓国では、夏から秋に、インド北部やネパールなどでは6月から9月頃の雨期に、蚊の発生が多くなります。他の熱帯地域では、年間を通して防虫対策を忘れないで下さい。
重症急性呼吸器症候群(SARS) Severe Acute Respiratory Syndrome
症状は多くの場合は、高熱(38度以上)で始まり、咳、息切れ、呼吸困難、悪寒、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛を伴う。数例の患者で、発熱初期に下痢を伴ったとの報告があるが、典型的な例では発疹、神経学的症状、消化器症状などは見られない。ヒトからヒトへ飛沫感染する。(咳など) また、特殊な環境下で糞便からの感染が疑われている。市販のマスクは飛沫感染を防ぐのに有効である。また、N95マスクの使用が医療用に推奨されている。
感染の可能性のある場所では、うがい、手洗いを丁寧に行う。人込みを避け、やむをえず行くときはマスクを着用する。

